界面活性剤とは?~nesno(ネスノ)・コラム~

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コラム

界面活性剤って何?

「界面活性剤」=「悪いもの」というイメージが強いですが、正しくは界面活性剤すべてが悪いわけではないのです。むしろ、界面活性剤がなければ、体も顔も髪も洗うことができませんし、洗濯だってできません。つまり、生活できないも同然なのです。「無添加石けんには界面活性剤が入っていない」と勘違いされている方もいらっしゃいますが、無添加石けんだって界面活性剤です。

そもそも、界面活性剤というのは、水と油という本来溶け合わないものの間を取り持って、溶けたような状態をつくるものです。そのしくみを利用して、油分を含んだ汚れを落としたり、乳液やクリームなどのスキンケアでは水と油を混ぜ合わせたりしているのです。

ただ、界面活性剤が少なからず肌や髪の負担になることは事実で、肌や髪はその中の水分が外に逃げて乾燥しないように、表面に油分の膜があります。その油分の膜は界面活性剤によって一部壊れてしまいますので、界面活性剤をむやみに使うと肌や髪の水分が失われてしまって乾燥状態になってしまうのです。

界面活性剤の歴史として、一番古いものは石けんで、昔に遊牧民が薪をくべて羊の肉を焼いたところ、羊の油がアルカリである灰の上にたれて、そこに石けんができたことが起源だといわれています。それから、洗浄剤として石けんが一般的に使われてきましたが、石けんはミネラルとの相性がとても悪く、水道水が硬水であるヨーロッパでは泡立ちが悪くなってしまい使い勝手のいいものではなかったのです。

そこで、現れたのが石油系の合成界面活性剤である「ラウリル硫酸Na」。これは硬水でもとても泡立ちがよく、ヨーロッパでは体を洗うのにも顔を洗うのにも、この「ラウリル硫酸Na」が使われました。しかし、刺激が強く、毒性があるとも言われ、また、肌深くまで浸透する性質があって、多くの肌トラブルを起こしました。

そこで、この弱点を改善したものが「ラウレス硫酸Na」です。これは、刺激や毒性といったものには変わりがありませんが、肌深くに浸透しない構造に作り替えたものです。それによって、肌トラブルは劇的に改善されて、今でも世界中のシャンプーの代表的な洗浄成分となっています。

ただ、この「ラウレス硫酸Na」も「ラウリル硫酸Na」もどちらも洗浄力はとても強く、肌の水分を保つために肌表面にある油分を取り過ぎでしまい、乾燥させてしまって、痒みを訴える人が後を絶ちませんでした。そのため、今では洗いあがりに肌に吸着する、何かしらの保湿成分と併用して使用されています。ですが、洗いあがり感を改善しているだけで、肌や髪にダメージを与えていることには変わりありません。

「ラウレス硫酸Na」以降も界面活性剤の研究は続けられていて、適度な洗浄力で、刺激や毒性のないものも開発されています。なのになぜ、その肌や髪にダメージを与えてしまう成分が、いまだにこれだけ多くのシャンプーやボディーソープに使われているのでしょうか。その一番の理由は値段です。「ラウレス硫酸Na」以降にその弱点を克服して開発された界面活性剤は5倍、10倍の値段になってしまっているものがほとんどなのです。

ですが、市場のシャンプーやボディーソープに対する価格イメージは「ラウリル硫酸Na」が多く使われていた時代から、ほとんど変わってなく、今でも500mL・500円以下で販売しなければいけない状況があるのです。その結果として、多少の肌や髪への負担を犠牲にしてでも「ラウレス硫酸Na」のようなものを使わなければならなくなってしまっているのです。

もちろん、「ラウレス硫酸Na」を使っていたとしても、各メーカーできる限りの安全性を確認していますし、使う方の髪や肌の状態によっても負担のかかり方、また、その負担を自己修復してリセットするチカラも変わります。ですので、「ラウレス硫酸Na」が入っていては絶対にダメというわけでもないと思います。また、価格だってとても大切なことで、毎日使うものだからこそ、経済的な負担もできる限り少なくするべきです。

ただ、私はまずどんな方に対しても安全なものであることが大前提で、その中でできるかぎり適正価格になるように努力することが大切だと思い、「ラウレス硫酸Na」「ラウリル硫酸Na」は使わないことを推奨しています。

日東電化工業株式会社 ヘルスケア事業部
ネスノ開発責任者 茂田正和