若林)世間一般には「テレビでハーブの情報を見て興味を持って」ということで通っているのですが…。具体的には、とある番組で「ゴキブリはハーブが嫌い」というテーマを取り上げていたのを見たことがきっかけです(笑)本当にゴキブリが大嫌いで、今思えばペパーミントだったと思うのですが、見事にゴキブリがハーブを避けているのを見て「これはスゴイ、これしかない!」と感動しました。私はずっと京都住まいなのですが、その番組を見た時はちょうど結婚して京都の山の中から国道などが近い古い家に越してきまして、ゴキブリに困っていたところだったんです。
茂田)そうだったんですね(笑)
若林)はい。それこそ「ハーブってどういうものなのだろう?」という感じで、インターネットはもちろん、ハーブの書籍なんていうのもほとんどない頃でしたので、持ち出し禁止の薬草辞典などを読むために週に2、3回は図書館に通っていました。夫がアトピーや喘息などを抱えていてツラそうだったので、何かできないかと気になっていて、その症状緩和に役立ちそうだと感じたことも理由のひとつです。そしてもともと私は料理が好きで、いまも教えたりしていますし、その趣味にもマッチしていて。先ほどの虫除けのこともしかり、いわゆるハウスキーピングへの有用性、いろんな形で少しずつハーブを利用して生活を快適にする、まさに"自然と共生していくってどういうことか"というノウハウが詰まっていたんです。当時の書籍にはもっと難しい書かれ方をしていましたが、いろいろ読むうちに、あ、そういうことなんだな、とわかって、どんどん興味が湧いて。もともと植物の知識を持っていたわけでもなかったのですが、すごく楽しく読めたんです。そうこうしているうちに、たまたま隣町でハーブの講座が行われるというチラシがポストに入ってきました。といっても、あとにも先にもあのチラシが入ったのはたった1回きりでしたので、不思議なご縁としか言いようがないのですが。そこで、私の恩師にあたる、日本でも有数のハーバーリストの講座を受けることになりました。主婦の私でも通える程度の金額だったし、書いてある講座の内容も、先ほど私が述べたような、生活の中に自然が入ってくるという感じで、「わあ、楽しそう」と思って早速申し込みました。実際、お会いしたらとても素敵な先生で、あんな風になりたいなあという気持ちになった結果、今に至るという感じです。
茂田)それは何年前くらいですか?
若林)いま20歳の娘がおりますがその子が2歳の頃ですから18年前くらいになりますね。まだ日本にはアロマセラピーという言葉すらほとんど入ってきていない、ハーブというとポプリとかそういうイメージだった頃です。ラベンダーもあまり知っている人がいなかったのではないでしょうか。
茂田)その頃のハーブと、いま捉えられているハーブ、時代によって何か若林さんの中でハーブについて変わったと感じる部分はありますか?
若林)意外に私の中では、変わっていないんですよね。ただ、当時よりも、人の生活がだいぶ自然の中に組み入れられるようになったと思います。パーマカルチャー(自然環境に配慮しながら、人間にとって持続可能な環境をつくり出すためのデザイン体系)とまではいきませんが、体に無理を強いるのではなく、体の調子に合わせて植物を取り入れていく。そのために、植物を育てて、料理に使ったり、生活を快適にすることに使っていくことで、その人自身にバランス力がつく、自力がついてくる、という感じですね。それこそもっともっと昔は、こういった植物と人間の共生が自然になされていたと思います。