茂田)最後に少し話が変わりますが、若林さんがオーナーをされている京都のカフェシードさんに伺った時に、意外だったことがあるんです。私の思い込みといいますか、きっと食事メニューはオーガニックでべジタリアンの方も満足できるようなお野菜メニューだと思っていました。それが、メニューを見たら思いのほか動物性の食材、それもお肉を使ったボリュームもそれなりにある内容だったので、肉好きの私としては嬉しくなってしまいました(笑)
若林)(笑)そうですよね。私の肩書きから、みなさん、カフェシードにもそういったイメージをお持ちだと思います。カフェシードはもともと高槻の私の自宅で月末カフェとしてはじまって、その時はパフェやケーキにいたるまで私がすべて作っていました。当時から、お客様はみなさん「もっとハーブ、ハーブしたお料理が出てくるのかと思いました~」とおっしゃってましたね(笑)日替わり月替わりで出していたメニューの中には普通の和食のようなお料理もあって、その中に上手にハーブを隠していたり、一品だけ季節のハーブをふんだんに使うなど、そんな感じでした。もちろん男性のお客様もいらっしゃるのでボリューミーなもの、やっぱりお肉やお魚をしっかり食べたい方は多いだろうという商業的な理由もないわけではないです。でも私はよくレッスンでも言っていますが、お野菜ってハーブなんです。そんなに気負わなくてもハーブをみなさんすでに摂っていらっしゃるはず。大事なのは旬のものを上手く摂りいれるとか、動物性タンパク質だって必要ですし、もちろんナシでもやっていけるとは思いますが、バランス良く、穀物を中心として美味しく、無理せずに摂ることです。
茂田)前回のネスノイズムでは薬膳料理家の鳥海さんとお話しましたが、薬膳料理家の方しかり、ハーバリストの方しかり、みなさん思っているよりずっと普通の家庭料理を作っていらっしゃるんですよね。
若林)そうですね、とくに日本食は本当に良くできていて、欧米の人から見れば、日本人は世界の中でも一番ハーブを上手に取り入れている民族だと思いますよ。ワサビ、白ネギ、大根おろしにシソと薬味なんてまさにそうです。海外の人にしてみたら「こんなにハーブが出てきた」ということですよね。日本人の場合、それが普通の食生活のなかに溶け込んでいるので、ハーブではなく薬味という分野で捉えているだけのことです。私の中でのハーブは生活の中に染み込んでいくものなので、ちょっとだけいつもより香り豊かなものを使ったら、こんな風に普段の料理がバリエーション豊かになって、いつもよりちょっと変わったお料理がひとつ出てきた、と。それってちょっと嬉しいですよね。とはいえ誰しもアイデンティティを崩せない部分ってあると思います。やっぱり出汁巻き卵は懐かしいし、豚肉のしょうが焼きだって美味しいし。だから、あまり無理しなくていいんです。豚肉のしょうが焼には、ちゃんとしょうがというハーブが入ってますから(笑)。どこの国でもそうだと思いますが、家庭の食生活というのが基本にあれば、それなりに体の補修のきく食べ方になっていると思います。
茂田)最近私も、お肌のためには食から摂るコレステロールは必要なものなので、一日一個の卵は基本です、というコラムを書いたところでした。コレステロール=悪という思い込みがあるせいか、無理して食べないようにしている方がまだまだ多いので。
若林)一番悪いコレステロールは、非常に機能が低下した肝臓で作られるもの。人間の体にはバランス能力が備わっているので、食べ物に含まれるコレステロールが悪、ということではないんですよね。それよりもバランスを崩した体の中で作られる悪玉コレステロールこそが問題。ではどうしたら良いかというと、肝臓の機能をバックアップして体の中からどう調整していくか、が鍵でしょうか。
茂田)そう思います。薬膳とかハーブというと、ちょっと構えてしまう方も多いと思いますが、少し知るだけでも、食生活の工夫が楽しく、というかラクになっていきますよね。そしてそれが日々蓄積して、自分の身になる、肌のためになるんだと思います。それにしても、私は良い方にばかりに巡り会えているとつくづく思います。鳥海さんしかり、若林さんしかり、上辺だけに終わらない本筋を教えてくださるので。スキンケアのことも食のことも、ひとりで頑張って疲れちゃうんじゃなくて、気軽に若林さんのレッスンに足を運んでみるとか、楽しみながらまずは体感!をおすすめしたいですね。
若林さん、今日は本当にありがとうございました。
若林)こちらこそとても楽しいひとときでした。ありがとうございました。