茂田)病は気から、という言葉がありますよね。プラシーボとかそういう研究に邁進しているところもあると思います。「毎日きれいだよ」と言われたり、恋をしたら本当に肌のきめが細かくなって水分量があがってきれいになったとか(笑)でもそれってすごくリアルな話で、無視できない部分ではあるんですよね。毎日仕事に忙しくて、メイクもしっかりで、夜はクレンジングでゴシゴシ落しても、肌がきれいな人がいるというのもひとつの事実。一方で、わりといろいろ気をつけて商品を選んだりケアしているのに、お肌の調子が優れない、という人が多いのも事実。それって不平等だなと思ったりもしますが、持って生まれた気質、性質、肌質というのも関係してくるんですよね。ただ、きれいになるために「何かやらなきゃいけない」「何かしなくちゃいけない」そういった縛り、義務感がストレスになっていることは大いにあると思います。手間をかけないことが、肌に負担をかけないことにもなり、ストレスを軽減することになる方もいます。対して、手間ヒマをかけることはストレスにもならないしむしろ楽しみという方もいるでしょうし。ただ、食事にしても身体を動かすことにしても、時間やお金を使って云々という美容論は、もうこの世の中にはいっぱいで。反対に、身体のしくみときちんと照らし合わせた上での手間をかけない美容論については、残念ながらとても情報が少ないですね。もちろんシンプルで手間ヒマがかからないことがすべて、ではないと思います。誰だってお茶のひとつもいれるし、シンプルライフの中でもコーヒーは豆を引いて自分でドリップして飲む人なんかもいると思うので。どこに重きを置くか、という自分の中でのバランスが大事なのだと思います。それさえわかれば、あとは一歩の踏み出しからどんどんはじまっていくというか。
若林)そうですね。それぞれの生活の中で、ここに関してだけはゆとりを持ちたいという点が誰しもありますよね。さっきのひと鉢のハーブを窓辺に置いてみる、というのもそうですが。
茂田)「ちょっと忙しいけれど肌や身体に少しでも良いことを…」と思い立ったなら、その日からいつものお茶をちょっとずつハーブティーに置き換えてみるとか。そういう感覚が身につけば、若林さんがおっしゃられたように自分に無理強いすることなく、ライフスタイルをどんどん快適に楽しくしていけますよね。私の中では、今年の夏はお子さんの紫外線対策がすごく大きなテーマになったのですが、それも「家族でネスノを使っています」という方が多かったので、であればもっと快適に夏を過ごして頂くにはどうしたら良いだろう、ということから展開していったんです。オーストラリアなんかでは、小学校の教室の入口にバケツが置いてあって、その中にサンスクリーン剤が入っていて、みんなそれを塗ってから校庭に出て行くというのが当たり前なんです。もはや子どもの紫外線対策は大人達の責任のひとつになっている。そして日本でも、確かに肌の色の違いや日照条件の違いもあるとは思うのですが、ここ20~30年の間で紫外線量が18%も増えているという事実があって。そろそろ被爆限界値を越えつつあるのではないか、というのが多くの皮膚科医の見解なんです。それで、私も子どもを持つ親でもありますし、取り越し苦労かもしれないけれど、子どもにとって安全な紫外線ケアを用意したいな、と。
若林)私も娘がいるので、そのお気持ちはとてもわかります。
茂田)紫外線の害っていうのは、大きく分けると2つありますよね。ひとつは肌表面の細胞に対するダメージ、そしてもうひとつは活性酸素によって細胞内のDNAが傷つく、という害。そして割合からいうと、後者の活性酸素によるDNAの損傷のほうが、紫外線によるダメージの6割から7割を占めているということがわかっているんです。そして今回の日焼け止めの開発にあたって、勉強会などにもいろいろ参加して再確認したのは、日焼け止めプラス、体の中を抗酸化にしておくことが大事、ということでした。そして子どもたちでも取り組みやすい、体の中を抗酸化にする方法って何だろう?と考えて。そうだ、子どもたちって夏は麦茶をゴクゴク飲んでいるから、それを抗酸化力の高いハーブティーにしたらどうだろう、と。もちろん、もともとは日焼けによる老化予防のために抗酸化物質を摂るという女性のお肌のためのテーマでもありますが、お子さんを紫外線からどう守るか、というのも今後もっとやっていきたいな、と思っているんです。ハーブ業界ではこういった紫外線対策において、何か研究が進んでいたりするのでしょうか?
若林)紫外線に対する直接的な働きとなると難しくなってきますが、紫外線を浴びることによって発生する活性酸素に対する抗酸化、皮膚の角質層を構成するケラチンの生成力アップ、そして内分泌系の働きを整えることでその人自身のバリア機能を高める、という3つのことは昔から認められているアプローチだと思います。あとは、紫外線を受けた後の肌表面のダメージをどう緩和していくか、というのもひとつありますね。これについてはハーブを使った伝統的な療法の中でも、カレンデュラの炎症鎮静作用によってダメージを食い止める、といった方法が代表的です。とくに紫外線対策と特化できる感じではないのですが、内側からその人のお肌の機能性をアップする、活性酸素の影響を軽減することについては、もともとハーブの本領だと思います。植物は太陽を浴びて光合成しないことには生きられない、でもそれだけ紫外線を浴びて細胞を壊すことにもなるので、自分の身を守るために抗酸化物質を作りながら生きています。だからハーブを体内に取り込むことは、私たちの中で起こっている活性酸素はじめフリーラジカルによる内的被爆を押え込むことにつながります。単純に抗酸化だけの話ではないのですが、古くから植物によるアンチエイジングの考え方や不老不死の捉え方がされてきたのは、植物が植物であるがゆえに作り出しているいろいろな要素が、生き物の健康管理に根ざしているためだと思います。