若林)逆に私こそ、「あ、こういうメーカーさんもあったのね」と、うれしい驚きでした。多くの化粧品メーカーさんが「与える」ことを推しているように感じていたので。「年齢を重ねた肌にはこれが足りなくなるから、もっと与えないと」という主張を目にする度に、私はそういった「与える」がマイナスになる経験をしていただけに、「なぜプラスすることが解決に?」という疑問が浮かんでいました。トラブルや悩みが出た時こそ、どちらかというと引き算の考え方をして自分の肌の回復力をつけていかないことには、何か与えても結局リバウンドを起こしてしまったり、アレルギーのような拒絶反応が出たりすることもあると思います。お化粧品に対しては自分の肌が持つバランス力をどう保っていけるか、というのを私自身ずっと重要視してきました。
茂田)差し支えなければ、ご自身の経験を具体的に伺っても良いですか?
若林)2つありまして、ひとつは私の母が、化粧品かぶれから深刻なトラブルを経験したことですね。化粧品を一切使わないようにして、それでも肌が元に戻るのに何年もかかったのをそばで見ていました。また、私自身も最初にお話した引っ越しのお話ともつながりますが、結婚して住む場所が変わったら花粉症を発症して、肌がひどく荒れてしまったんです。その時に、皮膚科で受けたアドバイスは「何もしないでください」ということでした。洗顔に関しては肌に負担がかかりやすいので「洗いたいなら、肌のうるおいを奪わないよう粉ミルクを溶いて洗いなさい」なんてことも言われました。以来、基本的にファンデーションも使いませんし、今でも自分の肌の状態、バランスを見てから洗顔をするかどうか決めます。無理に洗わなくても良い日はお水ですすぐだけですし、正直「お化粧品で何かを与える」といった類のお話はこれまで聞く機会すらなかったほどです。そんな中で、茂田さんとご縁がつながって「そもそもお化粧品とは、その人本来の肌の機能を保って調整するためのもの」とおっしゃられたことが、すぐに理解できましたし、腑に落ちました。化粧品でいきなり陶器肌のような素肌に、といったことは無理でも、その人本来の健やかな肌の機能を取り戻す手助けをする化粧品というのは良いな、と思いました。また、私自身が植物成分というのは植物が生き物であるがゆえ、人間の肌にも浸透しやすく、それが刺激となってトラブルにつながる可能性が十分にあることを熟知していますから。
茂田)私もこれまでに何度かイベントなどで、「内臓の代謝系統と、皮膚の代謝系統は違うんですよ」というお話をしてきました。みなさんわかっていても、忘れがちですよね。植物を食べて摂取する場合は、体内の酵素などで分解や消化吸収の働きが行われるけれど、肌表面には体内と同じように消化してアミノ酸に分解したり解毒するシステムがあるわけではないから、食べて良い植物成分が肌にも良い成分か、というとそうではないんですよ、っていうことを。
若林)新しいお化粧品を試す時もそうですし、引く時もしかりだと思いますが、つねに自分の体、肌に問いながら、が大事ですよね。自分の肌と相談しながら、バランスを見極めながら、自分にとっての解決策は何なのかというところが一番だと思います。